JADECについて

Ⅰ.ごあいさつ

矢口 新(1913~90)

矢口 新(1913~90)

 「主体的な行動能力は、主体的に行動することによって育つ」
 これは教育研究者矢口新(やぐちはじめ)が研究と実践を通してつかんだ行動形成の考え方です。能力開発工学センターはこの矢口の理論と方法を普及する活動を行っています。
 前身は矢口が設立した財団法人能力開発工学センター(1968-2016年、文部科学省所管)で、産業技術の高度化に適応する人材育成や、青少年の科学技術リテラシーを育てる学習システムの開発と実践指導を続けて来ました。
 2016年11月、財政悪化のため法人を解散しましたが、有志たちにより任意団体として活動を継続しています。矢口の志を引き継ぎ、現代社会の抱える様々な課題に挑戦する主体的な姿勢、主体的な行動能力の育成を目指して努力して参ります。
 ご指導ご支援をよろしくお願い申し上げます。

能力開発工学センター スタッフ一同


Ⅱ.活動内容

活動は、下記の4つの柱で行っています。

1.Webサイト: 能力開発工学センターの理念(考え方)の紹介。
研究活動・研修活動の紹介。
開発した学習システムや教材の紹介/研究論文その他刊行物のご紹介他。
2.ブログ: 「新座発・・・」 社会や教育の問題を JADECの視点で捉えます。
「脳行動学講座」 人間の行動や学習について脳の働き方から考えます。
「教育フロンティア 矢口新」 矢口新の人間観・社会観・教育観など。
「子育て日記+(プラス)」 悩み、苦しみ、楽しんだ子育てを振り返る。
3.メールマガジン: JADECの活動案内と、サイトやブログの更新案内など。
4.JADEC創設者「矢口新」のライブラリサイト(準備中)


Ⅲ.団体概要

団体名 能力開発工学センター
Japan Ability Development Engineering Center
(略称 JADEC (ジャデック) )
目 的 脳行動学の研究を基にして独自に開発した能力形成の方法を普及する事業を行い、人材の育成・教育の向上に寄与することを目的とする。
代表者 矢口みどり
住 所 埼玉県新座市新堀2-1-7-603 〒352-0032
電話/FAX TEL:042-497-8024  FAX:042-497-8044
ホームページアドレス https://jadec.or.jp/main/
メールアドレス infox@jadec.or.jp

交通のご案内


Ⅳ.能力開発工学センターの歩み

1.設立の経緯

JADECの創立は、日本が高度経済成長期に向かう1968年に遡ります。当時、産業界は、生産システムの機械化、自動化が進み、それに対応できる技術力、応用力を短期間で養成する必要に迫られ、それまで一般的だった長期間の徒弟奉公的な訓練方式では間に合わない状況でした。
時を同じくして、世界的に教育技術革新のうねりが起こり、日本では国立教育研究所の研究部長であった矢口新がいち早くその研究に着手、1965年には日本生産性本部プログラム教育研究所(当時)に招かれ、八幡製鉄八幡製鉄所(当時)を舞台として、革新的な教育を実践しつつありました。
やがて、科学技術庁(当時)が中心になって電気、電力、鉄鋼、ガスなど有力企業に働きかけ、矢口新を初代所長に迎えて、10数社からの賛助金によって誕生させた研究機関が財団法人能力開発工学センター(JADEC、会長 梶井剛)です。こうして、日本初の科学的な手法、即ち、育てるべき目標を行動としてとらえ、それを行動形成の段階に沿って育てるという「行動を土台とする教育技術」の研究がスタートしました。(1968年9月24日)


2.「行動を土台とする教育技術」についての研究を開始

JADECが最初に取り組んだのは、コンピュータを活用する訓練システム(CAI)の研究でした。自動車運転訓練用、航空管制訓練用、自動制御故障発見訓練用などの学習システムの研究でしたが、この研究には、科学技術庁(当時)からの特別研究調整費が当てられ、外部専門家との協同で全体では約10年かかりました。
この間並行して、知識分野である小・中・高校生を対象とした4000ステップに及ぶ電気学習の教材を開発しましたが、これには文部省(当時)からの科学教育研究費が当てられ、富山県科学教育センター他多数の協力によって、約6年間の学習実験を実施、成果を上げました。
これらの研究開発によって、行動分析手法に基づく行動形成の学習システム設計の方法論、即ち「行動を土台とする教育技術」が次第に明確になり、行動の捉え方、積み上げ方、また、訓練用シミュレータについての新しい概念と具体的な設計方法を提案することができました。


3.「学習システム設計者養成講座」(10日間セミナー)の実施

研究開発を進める傍ら、企業の教育担当者を対象としたセミナーを開催しました。1回の人数は12名までに絞り、体験、分析、設計、ディスカッションなど、完全に行動に終始するセミナーでしたが、好評を得て、その後30年余り継続し、全体では2000名以上の受講生が育っていきました。
セミナーは、結果としては「行動を土台とする教育技術」を企業現場に普及することになったわけですが、JADECとしては、所員(当時10数名)の人件費を得る必要から、いくつかのバリエーションセミナーを設けて頻繁に開催しました。研究途上の教育技術を企業内教育のつわものたちに指導することは容易なことではなく、所員は身の細る思いで指導に当たったものです。その後、さまざまなテーマの学習システム開発や企業現場での実践などの経験を積むことによって、指導方法も洗練され、長期間継続することになりました。


4.ニーズに応えて「行動を土台とする教育技術」を現場に適用

JADECの存在が知られるようになり、さまざまな技術の学習システム開発に対する依頼も受けるようになりました。テーマは、スチュワーデスの機内サービス、銀行実務、脳波のよみかた、チェンソー操作など林業技術、自動車板金図面のよみかた、理容ヘアカッティング技術、自動車整備技術、看護技術など、多岐にわたりました。
なかで、製造工場のオートメーション化に伴って必要となる全従業員再教育のための教育計画・カリキュラムの策定、テキスト・教材の開発、指導者の養成などは、2年近くを要するビッグプロジェクトでした。結果は、産業教育学会で発表して、産業教育に一石を投じることができました。
また、その後いくつかの製造工場での実践が続きましたが、この経験が現在も企業支援や教材販売に生かされています。


5.コンピュータリテラシー教育の学習システムの開発・指導者養成

JADECが自主的に開発・普及した学習システムとして特筆すべきものが、コンピュータ学習用構案教材です。このテーマは、設立当初から手掛けてきて、1980年代に社会のコンピュータ化に伴って一般人のためのコンピュータリテラシー育成というニーズが発生、それに応えて完成させたものです。完全な行動学習システムで、コンピュータを構成しているパーツを、シミュレーションし、それらを使って単純なコンピュータシステムを構築する学習教材です。
学習システムの販売を行う一方、指導者研修を実施しました。産業構造の転換にともなってエレクトロニクス関係への職種転換のニーズがあり、そのための企業教育担当者が多数、受講しました。驚いたことに、遠くスウェーデン(エレクトロラックス社の教育担当者)からの参加もあり、3人のスタッフが1カ月かけて、教育技術を含めて学んで行きました。
JICAの研修で来日したサウジアラビア工業高校教員、国内の中学校教員、中学生なども多数研修を受けました。年齢を問わず、コンピュータ構築に熱中する姿が印象的でした。行動を土台とする学習が、学ぶ人を意欲的にすることが実証されました。


6.一般財団法人への移行

2011年11月1日、JADECは政府の法人制度改革により一般財団法人となり、下記の2つの活動を柱にして
再出発しました。

  1. 行動形成の教育技術を生かし、企業のニーズに合わせた教育支援(コンサルティング)。
    特に製造現場で働く人々を育成するカリキュラム作り、教材作り、指導者養成など。
  2. 行動形成の教育技術の普及・広報活動(レポート刊行、Webサイト公開など)。

教育や訓練の場のみでなく、仕事や生活の場における行動のみがき方についても、主体的行動学習を土台とした様々な提案を行いました。


7.解散と任意団体としての活動スタート

財政難により、コンサルティングや教育・研修活動の継続が困難となり、2016年5月25日定時評議員会において財団の解散を決定。諸手続きを経て、同年11月15日をもって法人を閉鎖しました。なお、脳行動学に基づく行動形成の考え方の普及については、有志が任意団体(能力開発工学センター)をスタートさせ、活動を継続しています。
*任意団体の活動については、Ⅱ.活動内容の項をご覧ください。


附1.解散前5年間の事業報告・決算報告

[事業報告]

[決算報告]

24年度決算( 平成24年4月1日 ~ 平成25年3月31日 )
 ≫ 正味財産増減計算書 ≫ 貸借対照表 ≫ 財務諸表に対する注記
25年度決算( 平成25年4月1日 ~ 平成26年3月31日 )
 ≫ 正味財産増減計算書 ≫ 貸借対照表 ≫ 財務諸表に対する注記
26年度決算( 平成26年4月1日 ~ 平成27年3月31日 )
 ≫ 正味財産増減計算書 ≫ 貸借対照表 ≫ 財務諸表に対する注記
27年度決算( 平成27年4月1日 ~ 平成28年3月31日 )
 ≫ 正味財産増減計算書 ≫ 貸借対照表 ≫ 財務諸表に対する注記
28年度決算( 平成28年4月1日 ~ 平成28年5月25日 )
 ≫ 正味財産増減計算書 ≫ 貸借対照表 ≫ 財務諸表に対する注記

附2.歴代理事長 (2011年以前は会長、役職は就任時)

初 代 梶井  剛(1968-1976)海外電気通信協力会会長
第2代 鈴江 康平(1976―1999)科学技術会議議員
第3代 岩井 龍也(2000―2002)九州大学名誉教授
第4代 加賀谷新作(2003―2011)北陸工業高等専門学校校長
第5代 沖村 憲樹(2011―2016)独立行政法人科学技術振興機構 顧問