8.グループで学ぶ(協調学習)

矢口新がつくり上げた学習システムは、ほとんどすべてグループ学習方式であった。
学習者が数人のグループをつくって課題に取り組み、お互いに意見を交換し、協力して学習を進める。
この方式は現在、Collaborative Learning(協調学習)と呼ばれてその効果が再認識されているが、
教育現場では古くから、グループ学習とか小集団活動などと呼ばれ取り入れられて来た。
矢口はこのグループ学習方式を単に教育技術としてではなく、学習本来のあり方としてとらえている。

「学習は本来、社会的な行動なのである。個が全体になり、全体が個となる人間存在の循環運動としてあるものなのである。最近の教育の状況は、この学習の本質的意味が見失われているように見える。」

矢口はこうした考えの対極にあるのが、個別に知識を詰め込む受験勉強のような学習であるとし、全ての学習をグループで行うように学習の場を設計した。しかし同時に、学習そのものは一人ひとり個別に成り立たせなくてはならないことを指摘している。

「それはこの形(グループ学習)を唯一の形と考えるという考え方ではない。個別性も尊重すると同時に全体としての社会の探究へ参加するという姿勢を大切にしようとしたからである。個は全体の中へある時は入り込み、ある時は全体から離れ、そういう運動をしつつ、全体と個とが調和して進んでいかなくてはならぬ。」
矢口はそういう社会的場において学習をとらえ実践していったのである。

(引用は矢口新選集3「探究行動を育てる学習システム」1975 p157?8)

カテゴリー: 協調学習