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製造現場の人材養成

 日本の物づくりの企業、産業の現場では、急激な技術革新に対応しながら高付加価値の製品を製造していくことを求められ、一方これから大量に出る退職者の中での技術継承、そして人材流動化といった状況を抱えて、一人一人の従業員の能力を効率よく育成するかが問われています。

 一人一人の能力をいかに短時間に高めるかという、いわば高品質の教育を実現しなくてはならないのです。これまでのように、多人数の集団に対して一度に知識を覚えさせ、その後実際にやらせてできるようになった者だけを使っていくといったようなドンブリの教育ではなく、多様な従業員一人一人に合わせた、きめの細かい、無駄のない教育を作っていくことが必須となっています。

 学ぶものにとってもっとも効率のよい学び方、全身、そして頭(脳)をフルに使った学習を、どんな考えで、どのように行うことができるのか、それはそれほど難しいことではありません。


■ 現場マン教育の考え方と方法

1.現場マン(製造系社員)を育てる学習の場とは

1-1 現場で求められる人材は?

企業は、産業のグローバル化、多様化に伴い、多様なニーズに応え、高品質、高付加価値の製品・サービスを低コストで提供することを要求されています。 そうした中で現場で働く人々は、これまで以上に製品・サービスの品質管理や作業の安全管理、設備の保全や改善などの能力を身につけることを求められています。


1-2 求められる人材の教育は?

企業の現場で働く人々は、製品知識や品質管理、設備稼働率アップのための保全や改善技術、顧客のニーズに対応するサービス力などを、短い時間の中で意欲的に身につけることを、期待されています。教育を提供する側はそれを実現しようといろいろと努力しています。


1-3 現在行われている教育で、目的は達するか?

現在多くの企業で行われている現場の人々に対する教育は、忙しい現場の中から人を集め、指導者を呼び、講義・実習形態の教育を行う企業がほとんどでは、ないでしょうか。知識を与え、実物をさわらせる実習で、変化に対応できる・効率のよい教育ができるのでしょうか。講義で眠る者がいて、実習でただやらされるだけ受け身の教育では、意欲もなくなってしまうでしょう。


1-4 現場マンは「知識を入れる器」でも、「ロボット」でもない?

講義で知識を与えて、どれだけ何が身に付くのでしょうか。また手順をやらせるだけの実習で、どんな応用がきくのでしょうか。教育を受ける人(現場マン)の立場で、本当に能力が身に付く教育、意欲的に臨める教育、自分からやってみたくなる教育とは、どんなものかを考える必要があるのではないでしょうか。


1-5 人間が能力を身につける原則は?

できないことができるようになる、能力が身に付くということは、目的の行動ができるようになることです。その行動ができるようになるには、その人の頭の中(脳の中)に「行動のための回路(神経回路網)」ができる必要があります。その回路ができるには、「行動をする」しかありません。能力を身につけるには「自分で行動するしかない」のです。


2.現場マンを育てる教育のポイント -どういう行動をする場を作るかが問題-

2-1 行動をする対象がはっきりしていること

行動するには、対象がなければいけません。物であっても人であっても具体的な対象物が必要です。講義では、講師の話や黒板が対象になり、脳に対する刺激が少なすぎるのです。


2-2 行動する対象に向かって、脳(体)全体を使った行動をすること

対象に向かって、見るだけでなく、さわる、聞く、嗅ぐなど五感をフルに使って行動することにより、脳に行動の回路(記憶)ができるのです。見たのであれば、見ただけ。聞いたのであれば、聞いただけしか記憶されません。聞いただけで、手が動くようにはなりません。


2-3 「学習者が自分で行動するためのプログラム」があること

対象に向かって行う活動は、ただ闇雲に試行錯誤をするのでは、なかなか目標とする行動に到達しません。やさしいことから、だんだん難しいことへ、全体から部分へ、部分から全体へ行動を自分で積み上げていく学習の筋道(プログラム)が必要です。学習者自身がプログラムを持たない場合には、テキストのような出来るだけ具体的な「行動のガイド」が必要です。
 しかし、実習で行うような「いちいち行動を指示される」のでは自分で考えることができなくなります。自分で疑問を持ってやってみて、また考えやってみるための「ガイドのような指示」が必要です。


2-4 準備された学習の場で 「学習者個人に合わせた指導」がされること

学習のプログラムが用意されていても、学習者一人一人はそれまでの経験により、まったく同じ学習にはなりません。プログラムの意図が通じないこと、経験の不足することなどを個別に診断して、その場で適切な学習のガイド(指示)をしてあげることが、よりよい学習が行われることとなります。


2-5 グループでの学習が成立つと効果があがる(個別学習の上に)

一人の学習者にとって、他人の学習の様子をみること、考えを聞くこと、自分の意見を述べること、共同で作業することなどが脳に対する大きな刺激となって、学習効果を高めます。また苦労や成就感を共有することは、個人で学習するより数倍得るものが大きいと言えます。
 しかし、グループ学習は、個人の学習がきちんと成り立った上で、行なわないと逆効果になることもあります。グループ学習の指導は、個人の指導をしながら、グループをうまく成り立たせることが必要です。


2-6 現場マンの学習の場をつくる

<目標とする行動の分析>
事前の準備として、目標をできるだけ具体的な行動として決めてその行動に必要な能力(脳の働き、回路)を分析し、要素に分けます。
<学習の段階、内容の設計>
 その分析した要素の能力をどのような順番で、行う場にするのか、の設計をし、プログラムを作ります。


3.教育を活かす職場のシステム

基礎的な能力を学んだあと、職場・実際の仕事の場へ戻ったとき、学んだことを活かす場が用意されるかどうかは、重要な問題です。学んだ力を発揮してやってみることのできる、業務のテーマ、課題を職場の上司、監督者が与え、実施をサポートする環境が必要になります。
 そうした環境の中で現場の人々は意欲的に業務を行い、業務を改善し、新たな力を持っていくのです。職場での仕事、行動を通じて、現場の人は能力を身につけるのです。業務を離れた教育、いわゆるoff-JTはそのキッカケをつけることになると考えることができます。
 教育は、現場のニーズに密着している必要があります。