研究・実践から

教育のつながりが大きな力に-仙台市ガス局

2011年3月11日に起こった東日本大震災で、仙台市ガス局管内(仙台市と周辺7自治体)では、約31万戸でガスが供給停止の状況にみまわれました。全国51のガス事業者が応援に駆けつけ、開栓や修繕の作業に取り組みました。仙台市ガス局の天然ガス転換調整員教育の中心メンバーであった庄司さん(能開セミナー卒業生)は、その調整員教育のつながりが復興作業の大きな力になったと感じています。

仙台市ガス局の庄司陽一さんとJADECメンバーのメールと、2012年3月仙台ガス局の復興記録誌とともに庄司さんから送られてきた手紙からその一端をお伝えします。

1.仙台市ガス局、がんばっています

① 3/27 地震お見舞いメールへの返信
榊さん、お見舞いありがとうございます。都市ガス復旧準備で職場に泊り込んでいました。(JRストップ,ガソリン不足で,食料なし)家族,自宅は無事です。報道されている沿岸部は壊滅状態ですが,市内はほとんど被害が見えません,津波の被害が想定外でした。ガス工場も壊滅状態でした。が,幸い新潟からのパイプラインが健全で、そちらからの供給で東京ガス,大阪ガス,東邦ガス,西部ガスと地方ガス会社含めた2700人体制で復旧にあたっています。4月末完了をめどに頑張っています。(中略)大津波は日本沈没映画,パニック映画そのもので,実際に起こりました。関東にもいろいろ影響が出ています。余震もあります。お気をつけください。準備をしていたものの自然災害を甘く見ていました。(中略) 自宅ネット回線が調子悪く,本日メールを拝見いたしました。
〈仙台 庄司〉

② 4/1 TV報道された仙台ガス局の復旧活動の様子を見てのメールへの返信
お晩です。ご心配をおかけしております。私の職場の3階からの生中継でした。現、技術センターは天然ガス転換調整員教育を実施した建物です。(小澤先生、白尾さん、叶内さんがいらしたことがあります)
ガス業界は天然ガス転換★つながり、災害時の支援体制など事業者間の絆が強く、現在、全国のガス会社一丸となって復旧に臨んでいます。今技術センター(旧研修センター)は、復旧本部となり事務室のみ仙台で、その他の実習室はすべてテレビ放送の通り他事業者の作業場となっています。調整員教育以来のにぎわいです。現在、応援作業者は2700人、仙台市ガス500人の3200人体制で作業しています。この建物に3200人いるわけではありません。
私は昭和53年の宮城県沖地震の経験、平成7年の阪神大震災の復旧応援経験があり、作業の流れはつかんでいるつもりでしたが、想定外の大津波がありガス工場が壊滅状態となりました。毎年、災害訓練をしていましたが、形骸化していてあまり役立ったと言えませんでした。その辺の災害訓練方法など復旧が完了したら、考える必要がありそうです。全面復旧にはもうしばらくかかりますが、落ち着いたら、今回の東日本大震災についてお話しできたらと思います。津波警報が出たら、振り返らず、できるだけ高台に逃げるが教訓でした。
家族、建物は無事です。ガソリンが無いのが困っています。復旧作業にも影響しています。電気、水(止まらなかった)、ガス(うちはプロパンガス)でライフラインはあまり困りませんでしたが、お店がやっていないので、冷蔵庫が空になり、ある程度の備蓄は必要だと思いました。米もなくなり農家の同僚から購入しました。米さえあれば何とかなります。これも実感しました。ガソリンも6時間ならんで入れました。いろいろ学習しています。余震、原発と皆さんもお気をつけください。お見舞いありがとうございます。
〈仙台 庄司〉

③4/2 交代休みの日に
復旧は長丁場となりそうなので、本日は交代で休みとなっています。午前中は病院をはしごして薬(持病=生活習慣病)を調達してきました。食べるものが無くだいぶ痩せましたが(ダイエットになった)、コンビニ、スーパーも開いてきています。並ばなくても買えます。本日はイオンにいってきまして、冷蔵庫もだいぶ回復してきました。
JR壊滅、仙台空港の津波被害、燃料不足、物流ストップなど、効率を求めすぎた、現代の都市機構のもろさが露呈されたと思いました。想定外でありますがこんなことが起きるのですね。戦争でなかったのが救いですが。都市機能は徐々に回復にあります。JRも近郊の運行が始まりました。東北新幹線は4月中には開通しそうですが、津波被害のあったところはしばらくかかるのではないでしょうか。下水の処理施設も壊れたため、水、ガスが復旧しても、水使用の制限が求められています。私も定年まで後5年となりましたが、復興という仕事が与えられたという気がします。10年単位の仕事かもしれません。
明日からの一週間がガス復旧の山場となります。応援のガス会社さん(3000人)に感謝してまた頑張りたいと思います。能開セミナー教え子はそれぞれの部署で頑張っています。ではまた落ち着いたら連絡致します。
〈仙台 庄司〉

④4/9 最大余震M6強の日
今晩は。余震が来ました。一部の地区のガスが再度止まりました。いろんなことが起こりますね。想定外です。ガスの復旧、東北のガス会社の復旧、仙台市の沿岸部の復興、宮城県の復興、東北地方の復興、福島大変です。いまこそ探究心が必要です。日本は乗り越えられるでしょうか。不安です。元気を出してがんばります。
〈庄司〉

⑤4/17 仙台市太白区に住む人からのメールを、激励のことばを添えて、庄司氏に転送
昨夜遅く、太白区に住む友人から喜びのメールがきました。
「今日やっとガスが開通しました!これで大分平常の気分に近くなれそうです、余震も前よりかなり少なくなったし。(中略)全国のガス会社の方々にほんとにお世話になりました。この辺りは、閉栓は東京ガス、道路での管の修理は東邦ガス、今日の開栓は広島ガスの方でした。開けるときはちょっとびくびく、お湯がでたときは感激でした、あんなに何でもなく使っていたのにね。早速久々に家でのお風呂、幸い余震もなくのんびりと入りました。ガス工事自体は海の近くでは手付かずの様子、まだまだかかるのでしょうね。」
 ほんとに全国のガス会社が協同して全力で復旧に当たっている様子がわかります。余震もあって、まだまだ工事は大変なようですね。中核部隊の庄司さんはさぞお疲れでしょう。ほんとにご苦労さまですが、引き続きのご努力、どうかよろしくお願いします。(疲れすぎないように頑張ってください。)
〈小澤〉

★4/17 復旧対策隊、解散
17日仙台市宮城野区のガス局庁舎で行われた解散式には、事業者ごとの色とりどりの作業服姿の同隊作業員約300人が出席。市長の感謝の言葉に対し、石川哲夫対策隊長(大阪ガス)は「励みになったのは市民からのねぎらいや感謝の言葉。仙台の復興は始まったばかりで、今後はそれぞれの形で復興の応援をしていきたい」と応えた。なお、一部の事業者は残って、残る地域の復旧に当たるという。

⑥4/18 復旧隊解散の翌日に
おはようございます。小澤様、お友達のガスの復旧、お待たせいたしました。太白区八木山地区の方ではなかったでしょうか。全国51事業者4200名の復旧隊でした。(全事業者数200数社)昨日解散式を行い、一応の復旧が完了しました。まだ、3000戸ぐらい継続して作業している地区があります。工場の復旧を除いて、連休明けぐらいまでかかりそうです。これからが、本番かもしれません。体調に気をつけがんばります。余震が関東方面に移ったような気もします。お気をつけください。ではまた。
〈庄司〉

2.教育のつながりが大きな力に

―仙台市ガス局、庄司陽一さんからの手紙―

昨年の震災では皆様に大変ご心配をおかけしました。また、沢山のご支援をいただきました。このたび、仙台市ガス局の復旧の記録誌が完成しましたので、ごらんください。今回の復旧に当たっては、全国のガス事業者の皆さんの支援、応援が一番でしたが、調整員教育で育てた職員が熱量変更での経験を生かし、現場の最前線で対応したことも、復旧が早期に行われる結果に繋がったものと考えます。これは仙台だけでなく、東北の被災事業者にも言えることで、東北の熱量変更作業のときの繋がりと同じガス事業を行っている全国のガス会社、関連会社の絆の力です。
もうすぐ1年になりますが、この経験を忘れることなく、復興作業に努めていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。
(仙台市 庄司)

★ガス業界は天然ガス転換つながり
ガス業界は1960年代の末から約40年にわたって天然ガス転換という一大事業を展開。その調整員教育はすべて、最初に能開方式(シミュレータを行動対象とするプログラム学習方式)を取り入れた大阪ガスの強い薦めによって能開方式で実施された。調整員教育の指導に当たったトレーナーの主力メンバーは、能開センターのセミナー卒業生。