能力開発工学のポイント「教育の形・姿」

「シミュレーション」ラーニング
学習対象に向かって五感を使う行動・経験

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「学習」とは行動によって行動ができるようになっていくこと
 「学習」つまり「できないことができるようになること」とか、「わからないことがわかるようになること」というのは、脳科学によれば、「脳の神経細胞のつながりができること」です。
 そしてその「神経細胞のつながり」は、人間が行動、経験をすることによりよってのみ作られるのです。(この「行動」は、単に動作を伴うものだけでなく、思考的なことも含まれます。参考:能力開発工学の土台となる人間のとらえ方

 その「学習」は、さまざまな対象物に対して見たり、聞いたり、触ったりする働きかけや、その時に感じて反応をすること、また働きかけるような五感を使って活動をすることで、脳、体全体の活動と言ってよいものです。ここで言うの「対象物」は、単なる物ばかりでなく、人や現象、過去の事実なども含むと考えられます。

 一言でいうと、「行動すること、経験することが学習」です。「leraning by doing」と言えます。

 五感を使って学習することに比べ、教科書を読んだり、人の話を聞くだけでは、脳の一部が働くだけで、あまり学習していることにはなりません。知識を受取り、覚え、テストをするといったこれまでの学習の姿は、本来の「学習」になっていないと考えるべきではないでしょうか。

目標とする行動を、分解して学習する「シミュレーション」
 脳の中に、神経細胞のつながりが出来ていくような「行動」をすることによって、「行動」ができるようになっていくのです。「行動によって行動能力を身につける」といってもよいでしょう。しかし、ただ目標と同じ行動を繰り返し、行っているだけでは、無駄が多いのです。

 例えば、「走り幅跳び」を遠くへ飛ぶことができるようになるには、なんどもなんども飛ぶことを繰り返すだけでは、上達に時間が掛かります。

「遠くへ飛ぶことをために必要な行動」を「速く走ること」と「遠くへ飛ぶこと」の2つに分解して、それぞれを別々に練習して(神経細胞のつながりをつくる)、そのあとでそれを合わせることにより、無駄なくできるようになるのです。

 脳の中に「速く走ることのための行動能力(神経細胞のつながり)」と「遠くへ飛ぶことのための行動能力(神経細胞のつながり)」を別々に作り上げて、あとで一緒にすると無駄なく身につけられると考えればよいでしょう。

 「分解した行動能力に集中してその学習をすること」を、「目標行動のシミュレーションをする」と呼ぶことにします。「シミュレーション」とは、「まねをすること」とか、「模擬をする」というような意味ですが、実際の感覚の一部分を育てるということだと考えておいてください。

部分的な行動能力を育てる対象物(教材)「シミュレータ」
 学習には、働きかける対象物があります。「物」や「人」、「外界の現象」、「過去の事実」など、いろいろなものがその学習の対象になると考えられます。

 部分的な行動能力を育てるために使う対象物を「シミュレータ」(訓練シミュレータ)と呼びます。特定の行動能力を育てる教材といってもいいでしょう。能力開発工学では、どのような行動能力を、どのようなシミュレータを使って育てるかが、重要なポイントです。

<シミュレータの例>
 右の写真は、電気の働きを学習するもので、いくつかの電気部品をリード線を使ってつないで、回路を作って働かせるものです。
 自分で考えて配線してみると、失敗しすることもありますが、そこで考え直してうまくできるようにやり直してみることが大切で、それができるよう工夫してあります。
 自分の考えをすぐに試してみることができるところが、電気の働きを学習する上で重要なことです。
 このシミュレータは、「学習プログラムテキスト」を使って学習するようにしてあります。(参考:電気・シーケンス制御入門学習教材

(注)一般に言われる「シミュレータ」という言葉は、「模擬装置」に使われます。ジェット機や電車の「運転シミュレータ」は、運転感覚を実機と同じ様に経験することのできるものです。これらのシミュレータは総合的な使い方で、「ターミナル(終端)シミュレータ」と呼べるでしょう。

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