14 できるとわかる

 「やり方はわかってるんだけど、できない」というようなことがある。

 例えば、自転車に乗る練習、逆上がりの練習、その他何か新しいことを始めたときに、多くの人が経験していることだろう。教えてくれるものは、いろいろアドバイスをしてくれる。しかし、その通りにやろうとしても、なかなかできない。何度も言われると、思わず「わかってるってば!」などと叫んでしまう。しかし、それは「本当にわかっている」のではない。正確に言うと、「わかっていると思っている」「言葉の意味としてわかっている」ということである。行動するときのポイント、考える項目としてわかっているだけであって、行動を成立させるための感覚としてわかっているということではない。

 「行動できる」ということは、身体を使った行動なら、「脳⇔身体(行動表現)」の連携ができているということである。その連携ができたとき、本当にわかったというのだ。できたときの「あっ、この感じ!」と初めてわかるその行動感覚だ。その行動感覚をしっかり身につけたとき、そしてそれを自覚したとき、はじめて本当にわかったというのである。

 数学や科学のような論理的行動の場合で言うなら、教えられた論理を使って自分ひとりの力で対象をとらえ整理することができるということである。教えられた通りに論理をたどるというのではなく、自分ひとりでその論理を使って様々な対象をとらえるという行動をして、それができるようになったときが、本当にわかったときである。

 「わかる」というのは、できたときの行動感覚の自覚なのである。つまり、行動することによってしか本当にわかるようにはならない。「わかるとできる」ではなく「できるとわかる」のである。
 大事なのは、言葉であれこれと説明して、わかった気にさせるようにすることではない。その人が行動して、自分でその行動感覚をつかめるようにするために、行動の仕方をアドバイスすることが大事だと言うことである。