第7回研究会 研究の方向が見えてきた

日時:2007年11月25日(日)午後1時~5時30分
場所:矢口文庫(埼玉県新座市)
出席:矢口(み)、榊、越川、小澤、北村(後半参加)

1.越川氏の論文(「戦後教育改革期における矢口新の役割」)について検討
 9月に学会で発表した内容について、教育史学会の学会誌に投稿した越川論文の検討を行った。事前に配布されてあったので、それぞれ意見を述べた。
 ・始めの部分、「実態調査に基づく」、そこからカリキュラム構成したということが何度も書かれているが、その内容がイメージできる材料を提示するとよいのではないか。(榊)
 ・川口プランについての紹介がほとんどないが、少なくとも参考文献には挙げた方がよいのではないか。(小)
 ・引用部分は、どこまでが引用された部分で、どこが越川氏の主張なのかが、読み取りにくい。内容を要約して述べたほうが良いのではないか。(榊,小)
 ・最後の部分が良い。越川氏の主張(矢口を研究する意味)がはっきり表れていて格調が高い。この内容が<はじめに>にほしい。<はじめに>の書き方で、読む気になるかどうかが決まる。そこで矢口新を研究する意味があることを、訴えると良いのではないか。(み,小)
 ・<はじめに>で、矢口新という人物の全体的イメージを与えるように述べてはどうか。その上で、矢口新の何を問題にしようとしているのか、その意味はどこにあるのかを述べるとよいと思う。(み)

2.研究会としての矢口新の研究の方向について
 矢口(み)氏が研究代表者となって、20年度の科研費研究助成を申請。提出した研究計画調書を土台にして、矢口研究会の今後の研究方向について話し合った。
  
研究テーマ:戦後教育改革期における矢口新の教育研究活動及び実践活動の今日的意味
 
●矢口新の活動の実態を明らかにすることを目標とする
 矢口新の仕事は、その「活動のしかた」に意味がある。
 教育研究といっても単なる文献研究ではなく、外国の方法の単なる紹介ではない。
   教育の場・対象を調査し、それにあわせて具体的な形を設計・実践する。
   実践した結果を具体的に提示して,教育の方向として提案する。
また、結果を分析して修正し、再構築する。そして実践する。 その連続。
 常に教育の現場に立って、そこにおける問題を捉え、教育を改善し改革していく。その姿勢を貫いた。その実像を明らかにし、教育現場と乖離した教育研究の現状への提言となる研究を目指す。

  【矢口新の研究活動のしかた】
     
   ①実態調査(教育の場,教育の対象の実態把握)         
   ②カリキュラム編成・教材作成(教育構想立案,学習活動設計,教材作成
   ③教育の実践(学習活動の指導,学習者の行動観察)          
   ④実践の評価,見直し(授業記録の分析)
  
 すべての活動は、教育現場との協同作業で行われた。初期においては、学校現場、後半はそれに企業の教育現場も加わった。その意味では完璧なラウンド的実践研究ということができる。
 ①→②→③→④から①、②、③に戻り、見直しを繰り返す。その過程で提案。こうした活動サイクルが生涯を貫いた。

 活動の背後には、下記のような視点・方法論があった。
   現状の把握 → 課題把握
   歴史的視点(春山作樹の影響)
   社会基底(海後宗臣の影響)
   実態調査(阿部重孝, 海後宗臣,村上俊亮の影響)
   世界的視野(世界的動向、新しい方法論)               

●いかにリアルに矢口の仕事が伝えられるが、目標到達の鍵。
  実態が捉えられる資料を、できるだけ多く収集する。
  矢口の仕事のしかたを知っている人の証言を収集する。(残り時間は少ない)
       
  <水海道>全部を端から調べるというのではなく、実践の実態を捉えるための中核となる資料を探して重点的に調べる。他は、概略の見当をつけてから、調べる。水海道の先生方の協力も仰ぐ。
         
  <富 山>まずは証人の一人である加賀谷氏(能力開発工学センター会長)から話を聞く。理事会で上京の折(08年3月末)が好機か。富山行きも早く実現したい。(科研費研究が採択されることを祈ろう!!)

○研究会終了後、忘年会ならぬ「望年会」。今年の本当に良い「出会い」の数々に乾杯!そして、今後の展望を語り合う。

■次回研究会:2008年1月27日(日)13時より

カテゴリー: 月例会

第5回研究会 越川氏の学会報告を中心に

日時:2007年9月30日(日)午後1時~5時
場所:矢口文庫(埼玉県新座市)
出席:越川、矢口(み)、北村、小澤

1.水海道調査(8月実施)の結果について

 水海道実践を知る上で、最も重要と考えられる資料が猪瀬資料(NOs.1~100)であるが、今回の調査では3割ぐらいしか掴めてない。再調査が必要である。

 水海道小で見せてもらった「名村リスト」は、「歴史の部屋」の資料を郷土史家の青木氏がリストアップしたもので、名村氏が10部コピーして関係機関に配布したそうである。手書きのため分厚い資料になっているので、データ化する必要がある。借用できるか。

2.矢口研の研究課題について

 矢口先生の実践を調べる切り口について話し合った。未だ群盲象をなでるに等しい状態の中から、下記の3点が浮き彫りになった。
 A.矢口先生が研究・実践した教育設立(カリキュラム)の方法論を明らかにすること。
 B.学ぶものすべてが学習可能な方法論(プログラム学習)への展開の軌跡を明らかにすること。
 C.勤労者の教育という視野による研究・実践の軌跡を明らかにすること。最近イギリスで提唱されているワークプレイスラーニングにも通じる思想・実践が見られる。

<Aについて>
○水海道については調査が開始されたが、富山の調査も急がれる。
 高卒者の出身県への定着率は富山県が日本一ということだが、総合開発の思想・実践が影響しているか。(要、旅費の工面)
○並行して、国研の紀要も調べる必要がある。国研の移転(虎ノ門)で図書館の資料が散逸する恐れはないか。(後日確認したところ、図書館は目黒にそのまま残ることが判明)

<B・Cについて>
 まず、矢口文庫の資料について、何が残っているか、何を残すべきかを明らかにする必要がある。研究会とは別に資料整理の時間をとる必要がある。

3.越川氏の学会発表について

 越川氏の教育史学会(第51回、9月22日、四国学院大学にて開催)での発表が終り、報告があった。

 テーマ:戦後教育改革期における矢口新の役割
     -戦後地域教育計画の分析を通してー
 
 要旨<教育史学会における発表の意義>:

■戦後地域教育計画論を、戦後教育史の中でどのように位置づけるか
 今までの戦後教育史の中では、カリキュラム改造の時期は戦後教育改革期であり、社会科に限られていた。地域教育計画論をカリキュラム改造と位置づけ、特別教育活動もカリキュラム改造として位置づける必要がある。埼玉県三保谷プランは、自治活動や部活動にみられる特別教育活動を生かした社会学習であり、日本の民主化に大きい可能性を内包した教育活動で日本的な特色のあるものであった。その歴史は、川口プラン・三保谷プラン・水海道実践・富山総合教育計画として脈々とつながっているが、教育学的に明らかにされていない。日本社会の現実の中で歴史的に展開された理論と実践の中からくみ取る作業がない研究は、現代の実践における土着(日本に根づいた)の力強い源流とはなりきれないで、欧米学問の輸入による啓蒙的な教育理論や実践に陥りやすい
■矢口新を研究でとりあげる意味は何か
 川口プラン・三保谷プラン・水海道実践・富山総合教育計画をつなげるものは、これらの全てを中心的に指導した矢口新(やぐちはじめ)である。矢口は、海後宗臣(かいごときおみ)門下の第一期生で、戦後教育改革期にも大きな理論と実践の成果を残した教育史上の重要な教育学者であるにもかかわらず、従来の教育史学会では一切取りあげられていない。多くの海後門下生の教育学者の中で、海後宗臣著作集の編集の筆頭になったのが矢口である。戦後教育学が、大学教員中心であり、その系列以外の研究や分野は研究対象からはずれる傾向があった。学校中心主義や教育内容・方法の官僚統制の弊害により、矢口の理論や実践は、今までの教育史研究ではとりあげられていない。教育実践や教育事象に影響を与えた理論や教育研究者を、社会的立場とは相対的に独自な形で評価する必要がある。
■地域教育計画論における矢口新の役割の研究の意味は何か
 本研究は、日本の地域生涯教育計画論を構築するうえで社会教育や学校教育をも含めた地域全体のカリキュラム作成計画の研究の土台になる。今までの教育研究・教育史研究が、分野ごとの研究に制約されてしまったり、未来への教育政策への大きなビジョンを持たなかったり、大学や学会の枠内にとどまる傾向があったため、矢口新は研究の対象にならなかった。海後宗臣=矢口新の日本の戦後教育の基盤をつくった両教育学者の理論と評価を行うことが、戦後60年の日本の教育の再評価につながり、新たな研究の未来を開く。

≪質問者≫
  橋本昭彦氏(国立教育政策研)
 「矢口の仕事の負の部分、正の部分をどう評価するか。」
  秦氏?
  阿部氏?

なお、この研究発表は何らかの形で論文に掲載されるよう準備をしている。

カテゴリー: 月例会

水海道小学校「歴史の部屋」を訪問しました(第4回研究会:訪問調査)

訪問日時:2007年8月9日(木)9:00~16:00
訪問場所:茨城県水海道小学校(常総市水海道天満町)

水海道側出席者:倉持 正(元水海道小学校教諭)
        飯沼 敦(元水海道小学校教諭)
        菊池陽子(水海道小学校卒業生)
矢口研究会:越川、矢口みどり、榊、北村、小澤

 何年ぶりかの水海道は、随分近くなった。武蔵野線の南流山で新しくできたつくばエクスプレスにのると20分足らずで守谷。ここからは昔どおり、関東鉄道に乗り換えて13分で水海道だ。駅の地図が「常総市」と書き換えられているのが印象的。

 今回の目的は、水海道小における矢口教育の実態について関係者から直接聴くこと、さらに実態を示す資料を探すこと、の2点である。
 詳しい内容は越川さんからのメールを転載しておく。
> ①矢口新とのつながり
> ②中央教育研究所とのつながり
> ③三保谷に訪問1949年5月?
> ④社会科のカリュキュラム構成
> ⑤自治活動・特別教育活動とのつながり
> ⑥「歴史の部屋」に残されている資料 文書 映像 音声
> ⑦猪瀬校長の経歴・実績・人となり 矢口新との関係
> ⑧水海道実践が及ぼした影響  実験開発校
> ⑨第一回読売教育賞
> ⑩蠅のいない町 私達の学校
> 以上のようなことを中心に聞き取りをしたいと思います。

 訪問の結果は、予想以上に大きな収穫があった。第一には、参加された3人の方々の話がすべて具体的で感動ものであったこと、第二には、「歴史の部屋」はもちろんだが、それ以外にも(何と、ほこりまみれの廊下の書棚に)宝のような資料がざくざく発見できたこと。
 1950年ごろの記録や新聞、写真などがよくぞ今日まで保管されていたと驚くばかりだが、これは、何と言っても猪瀬校長が当時の資料を非常に丹念に整理保管していたことによる。その後何代もの教諭陣の変遷、学校の移転などを経ているため、現時点では整理は不十分ではあるが、とにかく当時の実践を語る資料が存在していることがわかった。今後の研究への大きな足がかりができた。
 
 というわけで、研究会のメンバーは全員興奮状態で帰途についた次第。
 みなさんのメールからも興奮の様子が伺えると思うので、下記に転載する。

①小澤→倉持氏(礼状) 
 今日は大変お世話になり、ありがとうございました。
いろいろ貴重なお話を聞かせていただいた上に、お昼までご馳走になってしまい、帰りには車で送っていただくなど、数々のご親切に対して心より感謝申し上げます。
 「歴史の部屋」および廊下の資料は、まさに宝の山、電車の中でも、一同興奮状態で話しつづけながら帰宅しました。さすがに水海道小の実践、燃えた実践の迫力は凄いです。
 何とかこの素晴らしい教育の姿を広く伝えたいものです。こうした方向を目指して何らかの努力がなされることが、今の教育の閉塞状態を救うことになるのではないか、との思いを新たにしました。
 今夜のニュースでは、また不登校の生徒が増えたとのこと、海小のような教育では、生徒は喜んで学校に通ったでしょう。こうした教育を広めて、不登校で悩む生徒や家族を一人でも減らしたいものです。
 私たちの力は微々たるものですが、精一杯やって行きたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 飯沼先生、菊池さんにもよろしくお伝えください。

②倉持氏からの返信(小澤宛)
 暑い中先日はご苦労様でした。
 何十年振りかでの先生方との面会楽しかったです。懐かしく当時を思い起こしました。それにまた、消滅したと思っていた多くの資料が見つかりこの上ない喜びです。皆様のおかげです。心から感謝申し上げます。
 矢口教育学研究会の発展を祈ります。
 残暑厳しき折、お体大切に、皆様によろしくお伝えください。

③越川さんのメール
 研究会の皆様 9日は暑さもふきとんだ勢いで、とても感動的な一日でした。
これからの責任の重さをひしひしと感じますが、微力ですが精一杯努力してみます。
 次回30日には、学会報告のものを報告させていただきます。今月20日には要項をおくります。水海道小に保存されている資料があれほどあれば、矢口先生の理論と実践の検証おおいに役立つし、歴史的意義があると思います。
 1955年以降の文献(矢口先生のかかれたもの:雑誌)の保存状況と分析、
水海道小の保存文書の整理と分析と保存の作業が必要です。

④北村さんのメール(小澤宛)
 昨日はありがとうございました。
 よもやほこりまみれの作業があるとは予想しておりませんでしたが、
  >お供は多い方が楽しいです。気楽に参加してください。
 ということで、お供役?としてはお役にたててうれしかったです。
 矢口研究会一員となりながらも知らないことばかりで、しかも頭も整理されていないし、流れの中で行くということになってしまったけどこんな形でいいのかな、とつい気持ちが消極的になっておりました。でも、、
  >きっと何か感じることがあると思います。
というのがまさにそうでした。 
 特に、飯沼先生、倉持先生、菊池さんが喜々として、何十年前ものことを語り合ってる光景を見ることができたのは、私にとって大いなる収穫でした。つまり、
教えた側(教師)も、教えられた側(生徒)もともに思い出して喜び合える、それってとてもすばらしいことですよね。
 私自身は、振り返っても、学校の勉強のことで、思い出すことは、あまりに少ないです。思い出しても、何だか退屈だったなあということばかりです。だからあれだけ記憶に残っていて、話が出来るというのは、それが「実感」できたことがよかったです。
 たぶん、細かいことは忘れると思うのですがあの、3人の充実感の満ちた笑顔だけは、忘れないと思うからです。
 「温故知新」ってこういうことなのですね。もう昔のこと、途中ですたれてしまったことと、切り捨てないでそこに意義を見出して、そしてその何がよかったか、何が足りなかったのか、何をすればもっと長く続いたのか、そんなことを考えて今に役立てるということが、絶対できるものだと、そしてそれこそが必要なことだと思いました。
 何だか未熟なままで申し訳ございませんが、今後ともよろしくお願いします。

 以上それぞれに心うつメールなので、原文のまま転載する。(各位ともご了承のほどを。)
倉持、飯沼、菊池のお三方のお話は、すべて興味深く、当時の教育状況がよくわかるものばかりだった。この場を借りて、改めてお礼を申し上げたい。

★次回作業日:9月1日(土)(矢口文庫の資料整理などを行う予定)
★次回研究会:9月30日(日)

カテゴリー: 月例会

第3回研究会・水海道調査決定

日時:7月8日(日)午後1時~5時半
場所:矢口文庫(埼玉県新座市)
出席:越川、矢口みどり、榊、北村、小澤

前回、課題となったことについてそれぞれ担当したメンバーからの報告に基づいて話し合った。

1.冨山県総合開発の7・3体制の教育政策についての批判(宗像誠也ら著『人間能力開発教育と子ども・教師』)を批判する<榊正昭>
 
 ●宗像らの批判は、事実に対してというより、7・3体制を「産業に奉仕する」「資本家のいいなりになる労働者を育てる」教育政策として捉え、批判している。極めてイデオロギッシュな立場である。
 ●これを言葉によって再批判する意味はない。
 ●私たちは、総合開発の教育計画について、まず、その理念と現実の姿をつかむ必要がある。その上で、この計画が残したものについても、事実を明らかにし、評価する必要があるだろう。

 ★できるだけ早く冨山の関係者に会って情報収集した方がいい。
 まず、こちらの目的などを加賀谷さんに下話した上で、関係者に集まってもらう。年内実施?

2.水海道実践についての情報収集について<矢口みどり>
 ●130年史「仰ぐみどりの」名村栄治さん(編著者)より1冊、後日2冊贈呈あり
 ●研究会記録などがまだありそう
  (猪瀬嘉造先生が保管していたようだ。和男さんに問い合わせ中)
 ●映画・センターにあり
 ●国研の授業調査?

 ★水海道小学校の「歴史の部屋」を訪ねる必要あり。
  関係者の話を聞く必要あり。

 ★★8月9日(木)訪問決定。受け入れ:倉持正氏

3.矢口卒論『明治維新における教育制度』のデータ化について <北村>
 ●本文入力済み、注釈はこれから。
  漢字やかなづかいは現代式にする。読み易い。
 ●明治の教育は町人教育を受け継いでいる。

4.対談・鼎談の録音テープについて <小澤>
 ●文部省企画録音教材として作られたもの(各10分、3本)
  いずれも矢口先生が進行役を務めている。

 ・対談「青年団の役員」(1954、43歳)
 ・鼎談「村の実態調査」(1956、45歳)
 ・鼎談「産業振興と調査活動」(1956、45歳)

5.矢口新の教育調査について <矢口みどり>
 ●岡部研究所時代:白井村の調査
   日本初めての科学的な教育調査と評価されている。
   矢口は、この調査で中心的な活動をした。
 ●国立教育研究所時代
   10周年記念誌,20周年記念誌の記録から、
   同時進行で、重要な調査を精力的に実施していることがわかる。
   国研に調査部を作るにあたり、矢口が呼ばれたと考えてよいのではないか。
   それぞれの調査についての報告書あり。要、内容の解析。
 ●調査結果から、その地域に合った教育を組み立てるという考え方
   岡部研時代、海後先生による中国辺境地域の調査からの教育提案(S14?)に感銘したと聞いている
    
6.越川論文について <越川氏からの問題提起:資料配布>
 ●矢口教育学のネーミングをどうするか?
  “矢口”の名前をいれる?
  性格を表現する?
 ●国研での調査研究から、プログラム学習運動、能力開発工学センターでの産業界での実践へと移行していく過程をどうみるか?
  ・参考:新聞執筆「めぐりあい」

 
 ■次回は水海道訪問(8月9日)

カテゴリー: 月例会

第2回研究会とその後

日時:6月10日(日)午後1時~5時
場所:矢口文庫
出席:越川、矢口みどり、榊、北村、小澤

主として矢口先生の進めた「地域教育計画」について、基本思想について話合った。基本には、学習する者が生活する場の中に教育の内容を求めるというプラグマティズムが根ざしていること、その思想は現在にも通ずる普遍性を持っていると思われるのに、なぜ教育界がそれを認めることにならなかったのか、などについて意見を述べ合った。話題の一部は以下の通り。

●富山県の総合教育計画が産業に奉仕する教育として、宗像誠也らによって強く批判されたが、そのポイントは?     
   例「診断・治療」への批判  (生徒の人格を無視、病人扱いしている、云々)

●国立教育研究所で行った青少年調査は、どのように活用されたか?

●学習オートメーション、教育工学の運動はなぜ継続されていないか?
  (言葉が誤解を生んだ?)

●水海道小学校での実践の意味、後へのつながり?

●いずれにしろ、当時を知る数少ない人々から出来るだけの情報を入手しておく必要がある。
  ○水海道:倉持氏、名村氏、菊地洋子さん、猪瀬和男(嘉造氏孫、資料の所在?)
  ○富山:加賀谷氏、国香氏、島村氏

★第3回研究会ー7月8日(日)
                                          (O)

■後日、越川さんから学会発表について下記のような連絡があった。

 *学会発表の申し込みをしました。

   戦後教育改革期における矢口新の役割
=戦後地域教育計画論の分析を通して=

 戦後教育改革における社会科の創設と地域教育計画論は、地域と結びついた民主的な人間の育成をめざした実験的な試みであった。その理論の基盤はデューイに始まる進歩主義教育論であり、米国のバージニアプランであり、川口プランなどにつながるものであった。この流れの中で、教育計画における実態調査の方法を確立し、実践していった研究者が矢口新である。実態調査にもとづいた教育の内容・方法・計画は極めて科学的で民主的なものであった。新たに発掘された埼玉県の三保谷プランの分析をとおして、矢口新の「行動=形成の教育学」・地域教育計画論を歴史的に再評価していきたい。

*戦前の調査から、戦後すぐから1955年頃までの流れをおいたいと思います。
アドバイスをお願いします。その後水海道実践と富山がまっています。

カテゴリー: 月例会

研究会がスタートしました

 このたび、思いがけないことから、矢口新先生の業績を研究したいという人間が集まり、「矢口教育学研究会」(仮称)を立ち上げることになりました。
 そこで「研究会」の活動の様子を随時紹介するためのブログを開設し、関心のある方からのご意見・ご質問などいただければ有難いと考えました。研究の成果をどこに求めるかは、歩きながら考えて行きます。ご支援、よろしくお願いします。

 思いがけないことというのは、現在立教大学の大学院後期博士課程で教育史の研究をなさっている越川求さんという方が訪ねてこられたことです。越川さんは、現役の中学校の先生でありながら、大学院で研究を続けているというエネルギーのある方です。
 もともとは、コミュニティスクールや開発教育に関心をもって調べているうちに、埼玉県比企郡の地域教育計画「三保谷プラン」を知ったそうです。「三保谷プラン」というのは、「川口プラン」や水海道小学校、富山県北加積小学校での実践と並ぶ地域教育計画の一つで、当時中央教育研究所のメンバーであった矢口先生がその指導に当たっていたことから、「矢口新の教育学」にめぐり合ったということです。

 先日(5月5日)、越川さんの求めに応じて、矢口みどりさん、榊正昭さん、小澤秀子の3人が集まり、当時の矢口思想を知るための資料(主に多数の雑誌論文)を手に、意見交換を行いました。

 話し合ってみると、矢口先生を研究することが、単に過去を静的に研究することに止まらず、現在および未来に働く思想と方策を明らかにできるという信念が4人に共通していることがわかり、この信念を強固にして、いずれは何らかの形で発表するために、継続的に「研究会」を持とうということになりました。

 「研究会」について決まったことは、下記です。
 ①毎月1回ぐらいの会合を重ねること。原則として土曜日か日曜日。
★次回は6月10日(日曜日)午後1時から。
 ②場所は、矢口文庫(埼玉県新座市新堀2-1-7-603、西武池袋線清瀬駅から徒歩10分)
 ③越川さんが9月に予定している研究発表に備える必要から、まず1955年頃までの矢口先生の業績をとりあげる。この時期の実践が矢口教育学の原点ではないか、との思いもあります。
 
 この研究会への参加希望、問合せは、矢口みどり、榊正昭、小澤秀子まで。                                    <O>

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